日本の指導者が伸びない原因を考える 〜勉強しているよりも重要なこと〜

レアッシでは毎週末、スタッフ間でディスカッションを行なっています。

ディスカッションではコーチが各自『自分が担当しているチームの試合』の他、『プレミアリーグのプロの試合』だったり、『高校サッカーの試合』、もしくは『今度対戦する相手の試合』などの動画を切り取って分析しプレゼンし、そこには熱い議論が展開されます。

そしてそれを行なっている時に頭によぎった疑問。
「日本人の指導者は(多分)勉強熱心な方が多いのに、日本がまだまだ世界に追いつけないのはこういう理由かもしれない」ということ。

見当外れな部分もあるかもしれませんが、少し考えてみました。

熱いディスカッション

今日の僕のプレゼンは『U-10・1stチームの4月からの取組と変化』というテーマ。
プレゼン資料のパワーポイントのページ数は約60ページ。(枚数が多いから良いわけではないですが)

今年の3・4月に行われたU-10の試合、最近の試合の動画を分析し、「チームとして何が改善されたのか」「個人の問題点は何か」などについて議論しました。

そこでは同意する意見も厳しい意見も飛び交います。その後は別のコーチがプレミアリーグのあるチームの動画分析。それをどのように落とし込むか、そもそも落とし込むことができるのか、などコーチそれぞれが自分なりの考えを言います。

そのようなディスカッションを毎週行うのですが、これは『みんなが勉強してレベルアップを図ろう』というものとは少し違います。

クラブ内で導入しているシステム

話は変わりますが、レアッシでは毎年同じコーチが同じ学年を担当したり、一つの学年を同じコーチがずっと担当することはありません。
理由はいくつかありますが、代表的な例として『選手の適応力を鍛える』ということもあります。
同じコーチが2年3年と同じグループを担当することは良い面もありますが、『選手の適応能力の向上』には適しません。

世界のサッカー界を見ても、スペインの育成年代を見ても『監督が変わればやり方が変わる』中で、選手はそこに「適応する形で様々な経験値を上げ」て行きます。
『適応力』は選手が必ず学ばなくてはいけない課題です。

また、これは指導者側にとってもメリットがあります。例えばレアッシでは担当コーチはそのチームのリーグ戦や大会で『目標とノルマ』を設定しています。
「ノルマ」は最低限達成しないといけないこと、「目標はそれ以上の結果」です。

そしてそれを達成しながら「質の高いサッカー」を選手に学ばさなければなりません。それはクラブのミッションでもあります。
つまり『結果を出しながら未来につながる育成をする』ということです。

監督はクビになるか!?

シビアな話し、結果が出せない監督はサッカー先進国ではクビになるケースが多いと思います。
それはプロだけでなくアマチュアクラブでも。

リーグのレベルが低いクラブなら「とりあえず結果を出す」だけで評価されると思いますが、レベルが上がると「単に結果を出すだけでなく質の高いサッカーをしながら勝つ」という条件になると思います。

「結果は出ないが良いサッカーをしている」とか「質は低いが結果は良い」だけでは指導者として上へ上がって行くことはできません。

例えば、U-16のカテゴリーで質が高く良い結果を出したら、次にU-17、18を指導するチャンスが与えられる。
反対にU-9で思うような成果が出なかったらU-8からやり直す。

というように指導者の『力量』によってチャンスがあったり再度やり直したりしなければならないということは指導者のレベルアップには欠かせないことではないかと思います。

いつも同じ立場で指導することができる?

よくある日本の例ですが、いつも同じ監督が小学生年代のトップ、U-12を担当している。
毎年大会の上位には行けず、同じポジションに停滞していたとします。

ある年代の年に大会上位に食い込む。
でも翌年からはまた同じ大会結果。これが何を意味しているかというと、「指導が良い」ということではなく、良い結果を出した年代に「たまたま今まで以上に良い選手がいた」ということです。

指導者不足の日本の現状を考えると仕方がないことかもしれませんが、特に「アマチュアの育成年代の指導者に競争がない」というのは実情かと思います。

一般的には「結果を出しても出さなくても、翌年に同じチームで同じカテゴリーを担当」できます。
結果が出ようが出まいが、質の高いサッカーをしようがしまいが、翌年も同じ仕事をできるチャンスが無条件にあります。

プロのJクラブではどうなのかはわかりませんが、少なくとも「育成年代のアマチュアクラブ」では「指導者の競争がない」のではないでしょうか。
(プロクラブがアマチュアクラブに簡単に負けたら普通はクビでしょうね)

「勉強してます」よりも…

というようなことを考えていると、もしかしたら「日本の指導者が伸びない」ということが実際にあるとすれば(あくまでもイメージです)、それは「勉強が足りない」のではなく「競争が足りない」ということではないかと、今日のディスカッショをしている最中に感じました。

「スペインに行って勉強したいです」「講習会に行って勉強したいです」「練習を見学して勉強したいです」というのはとても良いことだと思います。
僕も「スペインに留学して勉強したい」と思いましたし、今でもセミナーやいろんな方と話す中で「勉強したい」と思っています。

が、それも大事ですがそれよりも大事なのは「勝負したい」「戦いたい」という気持ちではないでしょうか。

選手が目の前の試合に対して「負けても良いので勉強したい」と言ったら、大抵の指導者は???となります。
選手が「今は全然試合で活躍してませんが勉強してます」と言っても???

(試合会場に行くと時々「今年のうちの奴らは全然ダメで…」なんて言葉を発する指導者がいますが、それが建前なら良いですが、本当にそう思っているならまず改革すべきことは監督交代ですね)

このような状況を考えると、指導者が成長するには「日々勉強する」ことも大事だと思いますが、「この大会で結果を出さなければ担当を外れる」というような緊張感がある中で指導することも重要かと思います。

それは選手同様に「単に競争を煽る」のではなく、能力に応じて適切なポジションで自分を鍛えるということにつながると思います。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

サッカーコーチが学べる情報サイト『ジュニアサッカー大学』を運営