「『つらい』ことを乗り越えて今がある」という言葉の嘘 〜半分以上は必要ないもの〜

サッカーにおける日本の育成年代(主に小学生から高校生)の「今までの環境」に問題があるというのが僕のスタンスですが、これには相当『根深いものがある』と最近感じています。

今までは『体罰』や『根性論』『非科学的なもの』がまかり通るのは「それを教える指導者側の問題」だと考えていたのですが、実はそれだけではないようです。

スポーツ界に体罰がなくならない理由

今だに「スポーツ界において体罰がなくならないのは何故か」という問題。

以前、とあるジュニアの指導者(高齢の方)と話していると、
「うちは厳しいよ。だから保護者も『うちの子殴っても大丈夫です』という人しか来ない」
「だから、クラブの考えを理解している人ばかりだ」と、半分冗談混じりで言っていました。

人間的には悪くない方なので、半分「(大げさに)それくらいの根性はいるよね」と冗談で言っているくらいに思っていました。

年齢に適さない怪我をする選手たち

小学生で慢性的な膝の怪我をする、肉離れを起こす、など近年は怪我をする子どもたちが増加している傾向があるように感じます。
当初は「子どもたちの運動能力が低下している」からかなと漠然と思っていましたが、「サッカーが上手い子」ほど割合が高い。

なぜよのようなことが起きているのか?

それを認める風潮が指導者以外にもある

「体罰」や「無駄に長い練習」、「多くの練習量」や「慢性的な怪我」、なぜこのような馬鹿げたことが起こるかというと、指導者が無知ということ以外にも、「それを良しとする風潮」が社会にもあるということです。

僕らが『プロの指導者』として「休息の必要性」を唱えても「理屈は分かるけども、たくさん練習させたい」、「週に○回以上練習しても意味がない」と言っても、「オーバーワークさせる」風潮がまだまだあります。

分かっているけど、「たくさん練習と試合を不安になる」のが文化として根付いてしまっています。
これを変えるのは相当な努力と時間が必要ですが、「専門家」として根気強く啓発するしかありません。

あの時のつらい経験が…..って必要?

簡単な質問ですが、「自分が好きなサッカーをやっていて、高いレベルを目指そうが、そうでなかろうが」、『つらい経験』というものは成長のために必要でしょうか?

僕はこの『つらい経験』というものに胡散臭さを感じ、これの半分以上は必要ないものではないかと思っています。

例えば、「怪我をして練習したくてもできなかった時期」がつらかったのは問題ありません。
また、「パフォーマンスが上がらず、なかなかスタメンを勝ち取れなかった」というのも必要な経験です。「大事な試合で負けてしまい、あの時勝って入れば…」なども、競争のあるスポーツをやって入れば自然と経験することなので、それは大事なつらい経験で選手を成長させます。

反対に「今だに疑問」な「つらいこと」がたくさんあります。

「きつい練習に耐えた」「ボール拾いしかさせてもらえなかった」「体罰を受けた」「水も飲まずに長い練習を行った」「先輩の命令は絶対だった」「練習がきつすぎてゲロを吐いた」。

これらはまったく意味のない不必要な「つらさ」です。
1年生の時は「ボール拾い」しかさせてもらえなかったので「早起きして練習した」ということが美談として語られるのに、「練習時間にボール拾いをさせていた不合理さ」はなかなか追求されません。

それらは「成長するために必要不可欠なつらさだった」でしょうか?

僕ははっきりと「必要ないもの」と答えたいと思います。

スポーツにおける「体罰」や「しごき」など、それを根絶するには「保護者の目」が必要だと思いますが、それを容認する風潮があるのもまた事実です。

それに反対する指導者は根気強く啓発を続け、それらの考えに賛同する方々とやっていかなくてはなりません。

クラブの考えを「表明すること」はとても重要で、「クラブの哲学に共感する」方が増えることでクラブのブランドができます。
反対に言えば、「その哲学に共感する人が集まるし、それがクラブのアイデンティティ」になります。

僕らは「常に僕らが正しいと思うこと」を発信し続け、それに共感する方々とともに進んで行きたいと思います。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

サッカーコーチが学べる情報サイト『ジュニアサッカー大学』を運営