よくわからない『良いサッカー』を定義してみました

良いサッカー

サッカー指導者の方はもちろん、お子さんがサッカーをされている保護者の方も一度は耳や目にされた事がある言葉ではないでしょうか
でも何が良いサッカーというのに必要なんだろう、と言われるとなかなか説明に困るワードな気もします
そこで自分なりの『良いサッカー』というものを定義してみました

決してこれが正解だというわけではありませんし、私も勉強を重ねる中でその定義は変化していくものだと考えていますが自分自身の成長のためにも一度文字にしてみようと思いました

まずは『良いサッカー』の定義に入る前に理解しておいていただきたい幾つかのサッカー用語を説明させていただきます
これも私自身の解釈なので人によって異なる考え方をされている方もいらっしゃると思います

1.プレーモデル
これは監督が理想とするサッカーです。所属する選手のレベルや育成年代であれば選手の年齢なども考慮したうえで設定するものだと考えます。
理想とする形なので数か月・半年・年間を通じて変化する事はあっても試合毎に変化するようなものではありません。
2.戦術
試合を優位に進めるために必要なポイントを選手個人・グループ・チーム単位で抑えようというアクションを指します。
これは相手や天候なども考慮しなくてはならないので、試合毎・数分で変化が起きる可能性があります。

選手が判断してプレーしている

ではここから私の『良いサッカー』に対する考え方を定義していこうと思います。

まずは選手がピッチの中で自ら判断し、プレーしているという事が必要です。
その為にはプレーモデルという型は絶対に外せません。
なぜならこのメンバー・チームでこう戦いたいという理想があってこそ、日々のトレーニングで何を改善しようかという発想につながるからです。

またプレーモデルは選手の判断基準となります。
どういう事かというと、例えば自分たちがゴールキックの時にどんなポジションを取るかというアクションも大きな括りではプレーモデルに拠るからです。

私の担当しているU11ではゴールキック(GKがボールを持った時も同様)ではそれぞれの選手が決められたポジションに着きます。
そしてGKはショートパスがいいのかロングパスがいいのかを判断します(その判断に必要な基準も伝えています)。

それによってGKの選手は基準に沿って[認知→判断→実行]というプロセスを行います。
逆に「ボールを持ったらFW目掛けて思い切り蹴れ」とだけ要求されたGKは相手や味方の状況を把握する(認知)やロングボールを蹴るかどうかを決める(判断)というプロセスを排除してしまう可能性があるのです。

これはGK以外のフィールドプレーヤーも同様です。
とにかくボールを持ったら前に蹴りこんだりドリブルばかりしていては選手が判断しているとはいえず、ただプレーしているといえるかもしれません。

選手が判断する為には戦術が必要となる

しかしただ選手に「判断しろ」というだけでは上手くプレーできません。
なぜなら選手はジュニアであれば極端な話をすると短い時間の中で味方7人と相手8人の状況を把握しながらボールを操らなければならないからです。

これは簡単な事ではありません。
だから上手くプレーできるコツである“戦術”が必要となるのです。

ボールを受ける前にどんな事を意識すれば良いのか・ボールをもらった時にどこを見れば良いのか・ボールを離した後に何をすれば良いのかというポイントがあれば選手は不必要な情報を遮断する事でプレーが速くできるようになります。
つまり自分以外の15人を見るのではなく、この3人を見れば大丈夫だよと言われた方が判断するのは楽になるだろうという発想です。

日本人の特徴を踏まえないと戦術やプレーモデルは有害になる

ここまで『良いサッカー』に必要だと説明してきたプレーモデルや戦術は使い方を誤ると選手の良い部分を奪ってしまう危険なものとなってしまいます。

それは日本の教育や文化・性格というものが影響するからです。
例えば学校教育では先生や目上の人に対して意見を述べる事や疑問を呈する機会は多くないと思います。
つまりそういった人からの意見を尊重して受け入れるという事が当たり前になっているのではないでしょうか。

ですので監督が「こういう戦い方をしよう」と言うと盲目的にそれを信じてしまい、自分で判断しなくなってしまう場合があるのです。
私自身も「中から攻める事に偏って相手が集まっているからサイドから攻める事を意識して」というと次のプレーはどんなに中が空いていてもサイドにパスを出そうという選手のプレーを意図せず引き出してしまう事が多々ありました。

そうなってしまうと選手は自分で状況を把握して判断していないので『良いサッカー』をする事には繋がりません。

そういった部分を考慮した上で選手に判断基準となるものをどう伝えるのか・選手が自分で判断して実行する意識を植え付けるかを指導者は考えなくてはいけません。

では戦術やプレーモデルは必要ないのではないか

これに対する私の考えは「NO」です。
確かに先に挙げたような間違った使い方をしてしまうなら必要ないとなっても仕方ないかもしれません。
しかし選手がサッカーを学ぶには正しい考え方と使い方に基づいた戦術は必要です。

例えば…
1.ボールを持ったらとにかくFWにロングボールを蹴るよう求められるCB
2.前線が同数ならロングボールを入れる、自分たちのDFラインが数的優位ならサイドチェンジをするよう求められるCB
この2人のうち、どちらが考えながらプレーし成長するでしょうか?

確かに2の方が難しく目に見えるミスは多くなるかもしれません。
しかし判断を伴うミスは選手を成長させてくれます。選手の将来を考えるならば、考えてプレーする事を求めて失敗を許容すべきだと思います。

また、私の知人が「自由にプレーするとは、その状況に適したプレー選択に自由があるという事。何にも基づかずに自分の好きなようにプレーする事はただのカオスである」と言っていました。

まさに私も同じ意見で、サッカーがチームスポーツであり仲間と意思の疎通を図る必要がある以上、自分がやりたいように好き勝手にプレーする事は有益になるとは思えないのです。

まとめ

ここまでの私の意見をまとめて定義するならば
判断の基となる型を尊重しながら型に囚われずに選手自身が判断し実行しているサッカー】が『良いサッカー』となります。
少し難しい感じの表現になってしまいましたが、選手たちが好き勝手に即興でプレーするのではなくチームとして狙いを持ちながらその中で自分で判断し実行できるのが大切なのだと思います。

それらは小学生から取り組めますし、取り組むべきです。
「そんなのは中学生になってからやればいい」としてしまうと課題を先送りにしてしまうだけなのです。

その年代や理解力に応じて少しずつ積み上げていく事が後々の選手の大きな成長へと繋がるのだと思います。

あなたの(お子さんの)チームはどんなサッカーを志向していますか。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル2
□指導歴
2007-2012 清水エスパルス普及部
2009-2012 エスパルスSS駿東JY U-13監督
2012-2013 U.E.SANT ANDREU Infanitil A (U14)アシスタントコーチ
2013-2014 U.E.SANT ANDREU Cadete B (U15)アシスタントコーチ
2014-2015 C.D.ALMEDA Alevin A (U12) 監督
2015-2016 U.E.Sant Joan Despi Alevin D (U12) 監督
      U.E.Sant Joan Despi Infanitil E (U14) 監督
2016-現在 レアッシ福岡FC