バルセロナで活躍する日本人指導者 〜坪井健太郎氏インタビューVOl.02〜

前回の第一弾に続く第二弾。
(第1弾、Vol.01はこちら)
レアッシ福岡FCのスーパーバイザーである坪井健太郎氏のインタビューです。

スペイン人指導者と日本の指導者の違い

「スペインのコーチングスクールではどのようなことを学んだのですか?」

坪井「スペインでのコーチングライセンスの取得は日本のライセンス取得のプロセスと違い、長い時間学校に通って取得しなければなりません。
また授業内容がスポーツにおける一般的なものからサッカーの戦術やテクニック、フィジカルだけでなく、チームマネジメントに関するものや法律に関する授業もあります。まさにコーチになるための学校といった感じです。
その中でもスペインの指導理論はものすごく体系化されていて論理的です。」

—「コーチングスクールや指導現場でスペイン人指導者と接する機会が多いと思いますが、日本人指導者との違いはありますか?」

坪井「スペイン人の指導者は一人一人『自分自身の考え方』をしっかり持っています。自分のサッカー観というか哲学というか。先ほど話したコーチングスクールでもそれは強く見て取れました。私自身はスクールで学ぼうという気持ちが強かったのですが、スペイン人のクラスメイトは先生にも自分の考え方を伝え議論していました。つまりそれは、議論するための自分の考えをしっかり持っているということだと思います。スペイン人はコーチングスクールで学ぶことをそのまま捉えるのではなく、自分なりの考え方に取り入れたり発展させたり、または自分のチームに合う形で落とし込む能力に長けていると思います。」

—「コーチングスクールで学んだ後、スペインでの指導は変化しましたか?」

坪井「実はスクールで学んだ後のシーズンで大きな失敗をしました。当時私が通っていたコーチングスクールはサッカーサービスとも提携をしたりしていて理論的には整然としており私にとっては新鮮で新しい知識を得ることができたのですが、学んだことをそのまま自分のチームに採用した時に全然試合に勝てませんでした。
このような経験から、学んだことをそのままチームに落とし込むのではなく、いかに自分のチームに適応させる形で取り込むかということの重要性に気づきました。
実際にユース年代で結果を出したシーズンは理論的なことだけでなく、それ以外の部分にも力を入れることで良い方向へ進みました。」

指導者の責任感

—「新しい情報を得ながらもそれを自分なりのスタイルに落とし込んでいくのですね」

坪井「サッカー界では日々新しい理論や考え方が出てきます。そのトレンドを知ることは重要ですが、それ以上に取捨選択できる力が必要だと思います。スペインでは結果を出せない指導者はクビになってしまいます。そのため、新しい理論を学んだ後、失敗しても良いからそれを貫くなどということはできません。つまり、試合結果に対して監督が全責任を負うのです。新しい理論を採用して結果が出なければ、それを選んだ監督自身の責任ということになります。理論が悪いのではなく、それを選んだ監督の責任となります。私の考えでは、このような自己責任でものごとを採用するという姿勢がスペインと日本の大きな違いの一つだと認識しています」

スペインでの指導現場

—「坪井さんはここ数年バルセロナにあるコルネジャというクラブで指導していますが現場はどのようなものですか?」

坪井「現在はシーズンが終了しオフシーズンに入ってますが、2016-17シーズンまではバルセロナにあるUE.コルネジャというクラブで働きました。
年代でいうと、日本でいうU-19(高校3年生)の年代でこちらではフベニールとよばれるカテゴリーです。しかし僕らのチームはフベニールのBチーム、つまり日本でいう高校2年生のチームですので、高校2年生が3年生のリーグに参加しているという状態です。
このリーグには日本でも有名なFCバルセロナやRCDエスパニョールのBチームも所属しています。つまり、コルネジャもそうですがバルサやエスパニョールの高校2年生はレベルが高いので、一つ上の高校3年生のリーグで戦っているということです。
日本の環境に当てはめて分かりやすく言うと、強豪校の高校2年生のチームがプリンスリーグを戦っているという状況です。このような環境のもと、日々スペイン人のユース年代の選手に指導をしています。」

2016-17シーズンと今後の目標

—「先日まで行われていたシーズンはどのような結果でしたか?」

坪井「最終的な結果としてはリーグで2位となりました。優勝はFCバルセロナです。序盤から良い形でリーグ戦を首位で走っていまいしたが、終盤にかけて勝ち点をあげられず優勝を逃しました。しかし、バルサやエスパニョールといった有名なプロクラブと対等に戦えたのは素晴らしい結果だと思います。優勝はできませんでしたが、コルネジャというこの地域では有名なクラブの歴代の勝ち点を更新することができました。昨シーズンも我々がフベニールBの記録を更新し、今年は21勝8引き分け5敗と更に更新することができました。この結果には満足しています。」

—「今後の活動と目標を教えてください」

坪井「来シーズンは古巣であるCEエウロパというクラブで働くことになりました。フベニールA、高校3年生に相当する年代で、これまでに引き続きゴンサロ監督の第二監督を務めます。ここでの短期ミッションはフベニールAを2部から1部へ昇格させることです。しかし、それと同時にこれからこのクラブが大きな改革を迎えるための様々な取り組みが始まろうとしています。下の年代のカテゴリーから優秀な選手が輩出されるためにもクラブのメソッドの再構築など多岐な仕事が待っています。自分の担当チームのみならず、クラブの新しい展開にも関われるのは魅力的な仕事になると思います。
CEエウロパはスタッフを一新し、指導者を育てるためのコーチングスクールの開校など新しいステージを目指しています。そのようなクラブの大きな変革の中で、フベニールAを昇格させるという仕事に着手するのはとても刺激的なことです。
新たな取り組みですが、きっと素晴らしいシーズンになると思います。」

2018シーズンより古巣であるエウロパで新しいチャンレンジ、今後の活躍に期待しています!

(第1弾、Vol.01はこちら)

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