小学生でトレセンに受かりやすい選手とは? トレセンは見直す時期かもしれない

小学生年代の選手・保護者の方なら一度は耳にしたことがある『トレセン』。
トレセンとは日本独特のもので、JFA(日本サッカー協会)が行っている選手育成に関するシステムです。

福岡市の小学生の場合、最初に「区トレセン」がありその次に「福岡支部トレセン」そして「福岡県トレセン」という階層になっていて、最初の「区トレ」に合格したメンバーの中から上位に評価された選手が「支部トレ」の選考会に参加できる、という仕組みになっています。
トレセンの仕組み・流れ

選手も保護者の皆さんもこの「トレセン」にどうやったら受かるか?
と気になるところでしょうが、実際「選考会」はどのようなものなのでしょうか。

トレセンに受かる選手はだいたい分かる

レアッシのスタッフは誰もトレセンに携わっていませんが、福岡支部の小学生を見た時に、「この子は支部トレだろうな」とか「この子は支部トレまでは行かない」ということが何となく分かります。
また、「この子はとても素晴らしい能力があるがトレセンには受からないだろうな」ということも何となく分かります。
(※「うちの子トレセンに受かりますか?」という質問はしないで下さいね笑。トレセンの選考はあくまでもトレセンのスタッフが決めることです)

なぜそのようなことが分かるかというと、区トレセンや支部トレセンの場合は基準が分かりやすく、フィジカル能力やボールを扱うスキルが高い選手が目立ちやすいからです。

単純に言うと、試合を見ていて「パッと目立つ選手=ボールを持った時に良いプレーをする」と言えます。
目立つ選手の特徴としては「ボール扱いが上手い選手。ドリブルで2〜3人交わせたり、基本的な技術力が高い選手」は守備能力が低い小学生年代では活躍しやすくなります。

また、早熟型でフィジカルが他の選手が早く成長している選手も目立ちます。
他の子よりもスピードや体格差で勝るため、ボールを奪うこと、相手を突破することでも目立つことができます。

つまりボールに直接関係する部分で「個人の能力が高い」選手は受かりやすい傾向にあると思います。

ただ、これはあくまで分かりやすい一般的な例です。選考の基準がどのようなものなのか詳細は分かりません。今まで見てきた中ではそのような選手が多かった印象です。

『テクニックはあるのに戦術的な賢さは?』

おそらく「パッと見て上手さが分かりやすい選手をトレセンに合格させよう」とは選考する側も考えていないと思いますが、そのような問題が起きるのは何故でしょうか。

毎年トレセン選考会に選手を送り出しますが、チームの重要な役割をこなす選手でも、最初の「南区トレセン」にすら合格しない事が多々あります。

傾向として感じるのは、「ボール扱いがそこまで上手くはないが賢い(インテリジェンスが高い)」とクラブ内で評価されている選手は受かりにくい印象です。
テクニックと同じように必要な「戦術的賢さ」。ここがあまり評価されていないのは、小学生だけでなく、中学生以上の年代でも感じるところです。

トレセンに入っている選手を見て、「ポジショニングが分かってないな」「守備のセオリーが分かっていないな」といった『サッカーで重要な状況判断のミス』など、小学生年代で身につけておかなければならない基礎戦術を学んでいない選手はたくさんいます。

「それでいいではないか、まずは個を伸ばすことが大事だ」という意見も聞こえてきそうですが、本気で世界を目指すなら、戦術の部分は小学生年代から取り入れていないと将来的に高いレベルにいけません。
特に、小学生年代でテクニックレベルが高く、早熟でフィジカル能力が高い選手ほど、早く戦術トレーニングを学ぶべきです。
(先日、黒沼コーチが書いていましたが、トレセンでどんな練習をするか、見直す時期かもしれません。
(『これからのトレセンの役割 〜能力に応じた戦術を身に付けた選手が必要だ』)

本気で海外を目指すなら、今十分なテクニックがあっても戦術的な部分を学んでいけないと将来頭打ちになり、子どもの時は上手かったが…といことになっては意味がないです。

『選手を見る時間が少ないと偏る傾向にある』

テクニックやフィジカルが重視される傾向、実は選考会の仕組み自体に問題があります。
選考会には多くの選手が集まり、ゲーム形式だけを見て選考する場合が多いと思いますが、初見で選手の頭の中を見抜くのはかなり難しいです。

これはレアッシのスタッフが普段の練習や試合、ジュニアユースの選考会でも「選手の頭の中を見る(何を考えてプレーしているか)」ことを重要視していても、パッと一瞬で見分けることはできません。

そのプレーが偶然なのか、それとも狙って起きたことなのか、どうしても時間がかかります。
数十名いる中で、一瞬で良い選手を見つけようとするとどうしても「目立つ選手に偏る」のは仕方がないことです。

例えば、僕の場合は普段の練習でも試合でもボールがないところにいる選手のポジショニングや動きを見ることや、選手がプレーする時に頭の中で何が起きているかを見ようとします。
何故ならそれはよく観察しないと選手がどんな意図を持ってプレーしているかを理解できないからです。
反対にボール側はあまり見ません。何故ならボールを持って素晴らしいドリブルをするのはパッと見てわかるからです。それはきっとサッカーを知らない保護者の方でも分かると思います。それは当然素晴らしいプレーですが、観察しなくても分かります。

しかし、一回の試合でもしくは数回のプレーだけで、その選手が「本当に賢い選手かどうかを見分けるのはとても難しいもの」です。

何故なら、その選手が「状況判断を間違ったとしてもそれがその『知識がないだけ』なのか、トレーニングしてもできないのか」ということがよく分からないからです。

高校生くらいなら、この年代でこのような判断しかできない選手は伸びない、と言えるかもしれませんが、小学生の場合、そもそも「戦術的な部分を全く学んでいないから知識がない可能性」があるので、知識を与えればできるのかそうでないかは判断が難しいところです。

スペイン・カタルーニャの場合

スペインが良くて日本がダメだという話ではないですが、「海外の選抜のあり方」は参考になるかもしれません。
スペインでは「日本のような選考会」ではなく、例えて言うなら、南区選抜の監督が試合を視察し、その中から選手をピックアップするという流れです。
福岡支部トレセンならその監督・スタッフが試合を見に行き、代表選手を選ぶ。まさに日本代表と同じような仕組みです。

但し、これはクラブどうしのヒエラルキーがはっきりしている国のシステムだからこそできることです。
ヒエラルキーがはっきりしているというのは、選手がそれぞれのレベルに合ったクラブに所属しているからです。
福岡市を例で言うなら、福岡支部トレセンを決めるには1部でプレーしている選手からピックアップするという感じです。スペインの場合だと、3部のクラブに所属している選手が、1部のレベルでプレーできる能力を持っていることはありません。
そうであればすでに1部のクラブに移籍しているからです。
そのように「クラブや選手のレベルがヒエラルキーとして体系化されているスペイン」では、どのレベルのリーグを見ればどのレベルの選手がいるということがはっきりしているからです。
4部の弱いチームに1部でやれる選手が所属していることはありません。

トレセンの制度・中身を見直す時期かも

トレセンという制度ができて当初のサッカー環境と現在は大きく異なります。プロクラブの下部組織もあれば大きな街クラブなど昔は存在しなかったような環境になってきています。

また、「もともとボールを扱うテクニックが長けている選手をセレクトしてさらにテクニックを磨く」ということにも違和感を感じます。
世界のサッカーがどんどん変化している中で、まだ日本人のレベルが世界に追いついていない現状を考えると、トレセンの仕組み・あり方を見直すことも日本のサッカーの発展につながるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

サッカーコーチが学べる情報サイト『ジュニアサッカー大学』を運営