レアッシ福岡フットボールクラブ

福岡県福岡市のサッカーチーム

〜すべては選手のために〜 日本の小学生ではネガティブに考えられる「移籍」 Vol.1

選手が成長するための移籍システムは「競争」を生む

スペイン一部リーグのセビージャでプレーしていた日本人の清武選手がセレッソ大阪へ移籍、鹿島の柴崎選手がスペイン2部リーグのテネリフェへ移籍というニュースがあったので、今回は育成年代におけるサッカー選手の移籍というものについて考えてみました。

スペインと日本の育成年代(小学生・中学生・高校生)の大きな違いの一つに「コーチ・選手が移籍する」というものが挙げられます。基本的には良い結果を出せば、翌シーズンは上のチームに引き抜かれ、悪い結果だとレベルを下げたクラブでプレーしなくてはなりません。
日本でいうところのジュニア・ジュニアユース年代でも1年毎に指導者と選手はクラブから査定され、翌シーズンもそのチームに残れるかは分かりません。

指導者も選手もシビアな評価をされる中で、1回1回の練習や試合に全力を注ぎながら1シーズンを戦います。「量ではなく質が追求される環境」です。

しかし「移籍」というものは日本ではなかなか受け入れられないシステムだと思います。僕たちが活動している福岡県福岡市でも、選手の移籍をネガティブに捉える指導者が多いように感じます。

(ちなみに、僕は選手の移籍に関して賛成です。勿論チームを出て行かれるのは指導者にとってすごくつらいものですが、その分もっと良いクラブを作ろうと、クラブ・指導者側も努力する必要が出てくるからです。それは結果的には自然と選手のためになります。クラブ、指導者が守られるのではなく、まずは選手の成長を第一に考えることこそが「プレイヤーズファースト」を掲げているJFAの理念にも沿うのではないでしょうか)

クラブの体系、リーグの体系がそもそも違いますし、今までの慣習的にも難しさがあります。
しかし、このシステムはサッカーの指導者と選手を成長させる「根本的に必要なもの」を含んでいます。それは「競争」です。競争という言葉にはネガティブな面もありますが、それにより常に手を抜けない状況、1回の練習、1つの試合に全力を注ぎ、量ではなく質を高めるというメリットもあります。

移籍がないために指導者・選手が成長しない例ー①

こう考えると「競争」というものの重要性は理解できるとしても、それが「移籍する」ということと、どうつながるのかと思われるかもしれません。では、具体的な例を元に、僕らの考えを述べたいと思います。

(これは実例ではなく日本的に分かりやすくした例です)
例えば、ある5年生の選手が、その年代の1部リーグで活躍したとします。それはその選手にとっては容易に活躍できる場で、新しいことを学ばなくても「今の自分の能力だけで十分に活躍できるレベル」です。そして学年が1つ上がって6年生になった時に、同じレベルのリーグを戦う。
昨年もそのレベルのリーグでは「何も新しいことを学ぶ必要なく活躍できた」ので、また1年、同じことを繰り返すことになります。ここに「天井効果」が出てきます。

つまり大小の差はあっても、昨年活躍できたレベルでもう一年プレーするということは、「今の自分の能力だけで戦えるレベル」です。そうするとその選手は他の選手(そのリーグのレベルで学んでいる)より早く次のステップに行かなくてはいけないのに停滞してしまいます。
しかし同じレベルのリーグ戦なので活躍してしまい、選手は上手くなっていると勘違いしてしまいます。結果としては「目に見えない停滞」を生んでいることになります。

では、どうするのが良いのか?
それはその選手が難しく感じる(簡単には活躍できない)レベルのリーグでプレーさせることです。そうすることでその選手は「今の自分の能力だけでは通用しない」ので、「新いことを学ぶ必要」が出てきます。それを繰り返すことで選手は無駄な時間を過ごすことなく成長して行けるのです。

移籍がないために指導者・選手が成長しない例ー②

これとは逆に、そのリーグでのプレーが難しい例もあります。上記の例で言えば、小学5年生の選手が1部リーグの中でプレーが通用せず、出場機会が減っている場合です。
選手は「試合に出て上達する」のは絶対ですから、試合の機会が得れないということは同じく「停滞」を意味します。
この場合は、即座に1つレベルを下げたリーグでプレーし出場時間を確保する必要があります。つまり、「そのリーグのレベルはその選手にとっては難しすぎる」状態です。簡単すぎても難しすぎてもいけません。ある程度頑張らないと通用しないというラインの設定が必要です。

リーグのレベルを下げた場合、その選手、もしくはその保護者の方にとってはメンタル的にネガティブな印象を受けるかもしれませんが、そのままそのリーグで出場機会を得れないならば少し下げて多くの出場機会を与える方が、その選手にとって重要なのは前述した通りです。

「競争に勝つ・負ける」で判断しない・勝者のメンタリティ

このような考え方を進めて行った場合、注意することは上へ階段を上がった選手が天狗にならないこと。下がった選手があきらめたり、ふてくされたりしないことです。ここで始めて選手の「メンタル」は鍛えられ、その過程で「勝者のメンタリティー」を獲得します。

そしていつでも、上位カテゴリーに上がった場合に全く通用しなければ再度1つ下がったリーグでプレーすること、下位カテゴリーに下がった場合でもすぐに強い気持ちを持って良いプレーをしたならすぐに上位カテゴリーでプレーするチャンスが与えられることが重要です。

そうすると選手は常に1回の練習や試合で手を抜くことできません。重要なのは「たくさんの量をこなすことではなく、質を追求すること」です。

上がったり下がったりするということは、常に選手自身が向上できる環境でプレーするということで、そのような状態を作り出そうとすると「チームを変える」=「移籍」となります。冒頭で書いて通り、スペインでは当たり前、しかし日本では文化・モラル・慣習的にネガティブな印象を与える「移籍」、「競争が選手を成長させ、そのために必要なシステム」がまだ確立されていない日本でどのようにすれば良いのでしょうか。

長文になりましたので、では「選手が成長するために必要な移籍システム」に対して、我々のような小さな街クラブが、小学生・中学生といった育成年代の中で「移籍」というものをどのように捉え、実践しているかはVol2でお話ししたいと思います。
Vol.2はこちらへ

 

寄稿者のプロフィール

レアッシ福岡フットボールクラブディレクター吉廣 一仁
□スペインサッカー指導者ライセンス レベル1
□選手歴 筑陽学園サッカー部卒
□指導歴
2007-現在 レアッシ福岡FCジュニア,ジュニアユーススタッフ
2009-12 FCバルセロナ オフィシャルスクール福岡校コーチ
2015-2016 スペインバルセロナ在住
2015-16 UE CORNELLA Juvenil B 研修(バルセロナ)

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